質量のない雲、彫刻と生命の間 / Massless Clouds Between Sculpture and Life

teamLab, 2020

質量のない雲、彫刻と生命の間 / Massless Clouds Between Sculpture and Life

teamLab, 2020

巨大な塊が、質量の概念を超越したかのように、地面に沈むこともなく天井まで上がりきることもなく、空間の中ほどに留まり浮遊している。人々が、身体ごと没入できるその塊は、作品と身体との境界が曖昧である。

この浮遊する塊は、人々がかき分けることによって、少し壊れても、生命のように自ら修復する。しかし、生命がそうであるように、塊は、自ら修復できる範囲を超えて破壊された時、修復が追いつかず崩れていく。


生命とは何か。「生物」と「無生物」を分かつものが何であるかは、生物学上、未だに定義ができない。

あなたが明日もあなたであり続けているのは、形あるものが崩れていく「エントロピー増大の法則」に反している。エントロピー(無秩序の度合いを表す物理量)が極大化に向かうとされている宇宙の中で、生命はその方向に反している。


1977年にノーベル化学賞を受賞した化学者・物理学者のイリヤ・プリゴジンは、自然界には外部からエネルギーを取り入れて、内部でエントロピーを生産し、そのエントロピーを外に排出することによってのみ形成され、非平衡状態の中で維持されるある種の秩序・構造が存在する事を発見した。この概念を「散逸構造」と提唱し、「散逸構造」において自発的に秩序が形成されることを「自己組織化」と定義した。エネルギー(および物質)を外部に散逸させてエントロピーを外部に捨てることによって内部のエントロピーを減少させて秩序を作り出す。


生命体は外部から食物としてエネルギーを取り込み、排泄物としてエントロピーを外部に捨て、エントロピーを維持している。生命現象は、絶え間なくエントロピーを下げ続け、自己組織化し、秩序を維持することで生きている、散逸構造体であると考えられる。それゆえ、生命は、決して環境とは切り離しては考えられない。生命は独立して存在できない、外部の環境と連続的で一体である。


この作品では、自己組織化を試みている。そのことによって、万有引力にも遠心力にも逆らい、地面でも天井でもない空中の中ほどに回転しながら浮遊して留まろうする。そして、さらに生命と同じように自らを修復しようとするのだ。