呼応する小宇宙の苔庭 - 固形化された光の色, Dusk to Dawn / Moss Garden of Resonating Microcosms - Solidified Light Color, Dusk to Dawn
呼応する小宇宙の苔庭 - 固形化された光の色, Dusk to Dawn / Moss Garden of Resonating Microcosms - Solidified Light Color, Dusk to Dawn
日中と日没後で様子が変わるOvoid(卵形体)が、敷き詰められた苔の庭園である。
日の出と共に、Ovoidは周りの世界を映しはじめる。人に押され、もしくは風に吹かれ倒れると、音色を響かせ自ら立ち上がる。その周辺のOvoidも次々に呼応し、同じ音色を響かせ連続していく。
日の入りと共に、Ovoidは、自ら光り輝き出す。人に押され、もしくは風に吹かれ倒れると、その光を強く輝かせ、音色を響かせ自ら立ち上がる。その周辺のOvoidも次々に呼応し、同じ光を輝かせ、同じ音色を響かせ連続していく。
作品空間は、吹く風や雨、そこにいる人々のふるまいの影響を受けながらインタラクティブに変容し、環境と人々を作品の一部にしていく。それにより、作品と人々と環境、それから自分と他者が、境界なく連続していく。Ovoidは、風が静かで人々が何もしない時、ゆっくりと明滅をはじめる。
チームラボは色の概念を更新することを試みている。Ovoidは「固形化された光の色」と名付けられた新しい概念の色、61色で変化していく。
コケ植物は、陸上にはまだ生物のいない、岩と砂ばかりの世界に現れた、はじめての陸上生物だと言われている。コケ植物やシダ植物が現れて森ができたことにより、陸上にさまざまな動物も住めるようになっていった。
生物は、細胞内部における水が欠かせないため、体の水分が足りなくなると死んでしまう。これに対し、コケ植物は、周囲の湿度の変化により細胞内の含水率が変動する変水性という特殊な性質から脱水耐性を持ち、乾燥状態で長期間死なず、水が与えられれば生命活動を再開する。コケ植物は、変水性であるため、空気が乾燥している時と、雨や靄があるなど濡れている時で、色も姿形も大きく変化する。
コケ植物の間に生活しているクマムシも、周囲が乾燥すると、無代謝の休眠状態である乾眠状態になり、活動を停止するが、水が与えられると復活し活動を開始する。生命活動はないが死んだわけでもないクマムシのこの状態は,「生」でも「死」でもない第三の生命状態としてクリプトビオシス(cryptobiosis「隠された生命活動」の意)と呼ばれる。生命とは一体何なのかと考えさせられる。