物質化された時間 / The Materialization of Time
teamLab, 2026, Installation, Sound: teamLab
物質化された時間 / The Materialization of Time
teamLab, 2026, Installation, Sound: teamLab
渓谷の奥深く、古色の森。老木の幹に広がるウロコ状の地衣類「ウメノキゴケ」は、菌類と藻類が共生する究極の「開いた系」の生命体である。
太陽と雨のみで生き、水がなければ休眠し、宇宙空間ですら生き抜く。太陽と雨がある開いた系では永遠に近い寿命を保つ一方で、排気ガスなど空気が少しでも汚染されていると、すぐ死に絶えてしまう。
一年にわずか1mmから5mmという遅さで成長するウメノキゴケは、現代では、ネットで調べても「取り除き方」しか出て来ない存在である。しかし、江戸時代の人々は、この地衣類が纏(まと)う独特の風合いを「古色(こしょく)」や「時代がついている」と呼び、自分たちでは決して作ることのできない長い時間の存在として、最高級の美徳とした。
ウメノキゴケは「時間の物質化」なのだろう。
かつて、狩野永徳や円山応挙、伊藤若冲ら巨匠たちは、老木の幹に無数の「青緑色の点」を描き込んだ。その点は、樹木が千年の時を生きている証であり、絵画の格を決定づける記号であった。
本来、一部のウメノキゴケは紫外線によって、黄色や青色の光を放つが、日中は他の光が強いために、それを見ることはできない。
暗闇の中、紫外線によって明滅する色鮮やかな輝き。それは、数十年、数百年の歳月が森に描き続けてきた生命の軌跡である。
長い時間が物質化された輝きが浮かび上がる「Time Painting」なのだ。