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Higher-Order Sculpture

2020

人間が長い間つくり出してきたモノの多くは、物質的物体だった。

物体は、存在の境界が明確で、独立して存在し、それ自体で安定した構造を持つ。外界から分断された閉じた箱の中に入れても、存在し続ける。


一方、海に生まれる渦は、閉じた箱に移した瞬間に消滅してしまう。渦は、それ自体で自らの構造を持っているわけではなく、環境が生む流れの中にある存在である。外部から内部へ、そして内部から外部へと流れる水によってつくられ、流れとともに変化し、その存在の輪郭は曖昧である。

渦も、その外側も、同じ水でできている。そこに物質的な違いは一切ない。それにもかかわらず、渦は明らかに存在している。


Higher-Order Sculptureは、「Environmental Phenomena / 環境現象」の中でも、特に環境が生むエネルギーの高い秩序によって立ち上がる存在である。それは、独立して存在できる物体としての彫刻ではない。環境という開いた系を前提として、はじめて成立する彫刻である。


その存在の境界は曖昧で、形や大きさが変化し、構成要素が入れ替わったとしても、秩序が維持される限り、その存在は維持される。そして、環境とともに変化し、環境を失うと消えていく。


つくるとは何か。

ここでは、作家が素材に形を与えるのではない。作家が創るのは、存在が生まれるための環境である。その環境の中にエネルギーの秩序が生まれるとき、物体とは異なる存在が立ち上がる。

人類は数万年にわたって、素材に形を与えることでモノを生み出してきた。制作は、物体をつくることから、存在が生まれる環境をつくることへと移行する。


存在するとは何か。

ここでの存在の本質は、物質の集積ではない。物質的差異がないにもかかわらず存在する渦のように、環境の中に生まれるエネルギーの秩序そのものである。


人間と存在の関係も変わる。ここでは、人間の意図的な力では直接支配できない存在が立ち上がる。その存在の境界は曖昧で、人は存在の中に身体ごと入り込むことさえできる。

人間の存在とふるまいは環境に影響を与え、存在を揺らし、時に壊す。しかし、環境が維持されている限り、存在は回復していく。存在は、人間の意図ではなく、環境の側に立脚している。人間はモノを支配する主体ではなく、存在と同じ環境の中で関係する者となる。


Higher-Order Sculptureは、新しい素材や様式を提示するのではなく、彫刻の存在条件そのものを更新する。物質、量塊、固定された輪郭ではなく、環境が生むエネルギーの秩序が、彫刻を成立させる。

それは、人間がモノをつくるという概念と方法論、そして存在とは何かという問いへの、原理的な介入である。

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