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認識上の彫刻 / Cognitive Sculpture

2021

私たちは、見ている世界を認識しているのではない。

認識している世界を見ている。


彫刻、そして、人間が長い間つくり出してきたモノは、基本的に、その姿形が物理世界の側に成立していた。物質的な輪郭や分布によって、その姿形が決定されてきた。鑑賞者は、あらかじめ成立した形を外から見る者だった。


Cognitive Sculptureは、物体としてではなく、鑑賞者の身体と認識の中で形づくられる彫刻である。


ここでは、彫刻の姿形は、物質的な輪郭によって決定されていない。造形の主体は、鑑賞者自身の身体と認識である。


この彫刻は、それ自体では存在できず、環境との関わりの中で生み出されている。環境が生む現象、「Environmental Phenomena / 環境現象」が、鑑賞者の身体と認識によってはじめて形づくられ、その認識世界において、明確な存在として立ち上がる。


物理世界には成立していない姿形が、認識の中にはっきりと存在として現れる。鑑賞者それぞれの認識世界に、それぞれの存在が立ち上がる。


ここで立ち上がる存在は、虚構ではない。その存在を成立させる物理的なエネルギーは、その鑑賞者に対して実在している。しかし、その姿形そのものは、物理世界には存在しない。つまり、彫刻の姿形に対応する物質的な輪郭や、光や物質の空間的分布は、存在しない。


そして、錯覚でもない。物理的な事実を誤って見ているのではない。環境と認識者との関係の中に実在する現象が、鑑賞者の身体と認識によって、ひとつの存在として形づくられるということである。ここに立ち上がるのは、物体的な実在ではなく、「Cognitive Existence / 認識上の実在」である。


問われているのは、存在は物体としてのみ成立するのか、ということである。


人は、世界をそのまま見ているのではない。自らの身体と認識によって世界を形づくり、その認識世界の中で存在を経験している。Cognitive Sculptureは、その認識の働きそのものを、彫刻の成立条件とする。


Cognitive Sculptureは、新しい視覚効果や錯覚を提示するのではなく、彫刻の存在条件そのものを更新する。物質的な輪郭ではなく、環境が生む現象と、鑑賞者の身体と認識が、彫刻を成立させる。


Cognitive Sculptureは、彫刻の存在を、物体的存在から、鑑賞者の身体と認識の中でその瞬間ごとに形づくられる存在へと拡張する試みである。


それは、「誰が形をつくるのか」という造形の主体への問い、そして「存在とは何か」という問いへの、原理的な介入である。


存在は、物体としてだけではなく、環境の中に立ち上がり、認識の中で形づくられる。

存在と環境は切り離せない。

存在と私もまた、切り離せない。

私たちは、世界を外から見ているのではなく、その連続体の中にいて、その中で存在を認識している。

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