teamLab Phenomena Architecture
我々は2000年代からずっと内部と外部の境界なく美術体験ができる空間をつくり続けている。最初は小さな空間ではじまり、次第に大きな空間となり、複数の体験がつながった集合体となっていった。一貫していることは、体験を起点に空間をつくりだすということである。
その中で重要にしていることは、個人の体験の記憶が尊重されるために必要な形状とはなにかということ。例えば、だれもが共通の同じイメージを記憶しやすいものだと、同じかたちが記憶され、個人個人の独自な体験の記憶にとって邪魔であるのではないかという思いがある。
チームラボフェノメナの建築では、ある種の生物の皮膚が境界がなく、外側の皮膚と内部の臓器の膜がつながっているように、外部と内部は一体的に存在し、内部と外部の体験は境界がなく連続的で、それゆえに、ある目的をもったわかりやすいかたちがなく、1つの決まった象徴性がない。そのイメージは、雲にみえるという人もいれば、砂漠の曲線を感じる人もいて、ある人は、きのこの群れという人もいて、サーベルタイガーの骨という人もいる。1人1人の体験によりその有機的な形状は心の中に固有な像として記憶されていく。
そして、体験にとって有機的な形状であることが重要であると考えているため、チームラボ フェノメナでは内部と外部に有機的な形状を取り入れている。特に人が絶えず接触する床においては、いままで多面体しか実現できなかった床形状が今回は3次元形状での制作を実現できている。そのため、有機的な形状は、変化する視点や、身体の使い方により、視覚的な体験と同時に身体に体験が記憶されていく。身体と空間の境界が曖昧になり、身体の発見へとつながる。その身体に刻み込まれた体験が空間の記憶となり、内部から外部へと連続していき、人々の記憶の中でそれぞれの独自の像として身体を通して記憶されていくのである。そして、シームレスな有機的な空間により、部屋という概念から解放され、空間は個人と一体となりながら、全体であり細部でもある。そのことにより、場所的な概念を喪失するのである。
我々がつくる美術館は、体験を起点に構築され、体験の集合に布をかけたものが建築の外形であり、その内部と外部は境界がなく一体である。
設計:チームラボアーキテクツ