近代以前、日本では「かさねのいろめ」という、表の色と裏の色の組み合わせ(当時の絹は薄かったので裏地が透けたため複雑な色彩となった)や、重なる色彩のグラデーション、織りの縦糸と横糸の組み合わせなど、複雑な色彩に、季節の色の名前がついていた。
一見古典的なランプがランダムに配置されたこの作品は、鑑賞者と他者の関係性に影響を受けながら、連続していく光の作品であり、連続性の美、つまり、連続していることそのものの美しさを表現した作品である。
人がランプの近くで立ち止まり、じっとしていると、最も近いランプが強く輝き音色を響かせ、光はそのランプから最も近い2つのランプに伝播する。伝播した光は、同じように音色を響かせながら、最も近いランプに伝播し連続していく。2つに分かれた光は、それぞれ全てのランプを1度だけ通る1本の光の軌跡になる。そして、自分から生まれた光と、他者から生まれた光は、交差していく。
ランダムに配置されたかのように見えるランプは、どのランプの光が輝き出しても、そして、光が永遠に連続し続けても、常に光がなめらかな軌跡になり、他者によって生まれた光と交わるように考えられている。
具体的には、それぞれのランプから3次元上で最も距離が近いランプに線を引いたときに、始点と終点が同じの一筆書きできる1本のつながった線(unicursal)になるように、ランプの高さ方向の分布のばらつきと、光の軌跡である3次元的な経路のなめらかさを定量化し、空間上のランプの配置を数学的に求めている。
その結果、人に呼応したランプの光は、最も近いランプに伝播しているだけにも関わらず、一筆書きのように全てのランプを必ず通り、そして必ず1度だけしか通らず、同時期に他者が生んだ光と必ず交わり、最後に起点となった最初のランプに戻ってくる。
このようなプロセスによって生まれた一見ランダムに見えるランプの配置は、人々が自由な位置でランプと関係して生まれる、光の連続性の美のための配置になる。