空間「溶け出す光」に、《追われるカラス、追うカラスも追われるカラス:境界を越えて飛ぶ》が入ってくると、この作品ははじまる。終わると《追われるカラス、追うカラスも追われるカラス:境界を越えて飛ぶ》が出ていく。
空間と一体となって描かれた作品は、溶け出し、この世界に溶け込んでいく。
作品とこの世界は連続的で、作品と身体との境界は曖昧である。
この作品は、《追われるカラス、追うカラスも追われるカラス、そして分割された視点》(2014)から続く、鑑賞者の視点が固定されず、視点は左右方向だけではなく奥行き方向にも自由になり、縦横無尽に歩きながら、身体ごと作品世界に没入する身体的知覚への模索である。
光で描かれた八咫烏が飛び回り、その軌跡が光跡となり「空書」を描く。カラス群は、先頭のカラスを追いかける。追いつかれたカラスは花となって散り、追うカラスもやがては追われる側になっていく。