Nirvana – Dome Version

teamLab, 2012, Digital Work, 6min 10sec (Φ30m), Sound: [SHIIYA Haleo (Sound Director) + AO Shigetake (Sound creator)]

Nirvana – Dome Version

teamLab, 2012, Digital Work, 6min 10sec (Φ30m), Sound: [SHIIYA Haleo (Sound Director) + AO Shigetake (Sound creator)]

伊藤若冲(1716 – 1800)は、近世日本の画家の一人。江戸時代中期の京都にて活躍した絵師。若冲は、升目画などと呼ばれる、画面全体を数万もの升の形に区切って升目ごとに彩色する、特異な表現方法を残している。本作品は、「鳥獣花木図屏風」や「樹花鳥獣図屏風」をモチーフにしている。

制作プロセス

チームラボは、平面的だとされる伝統的な日本の美術には、西洋の遠近法とは違った、空間の論理構造があると考えている。本作品はその考え(我々はそれを「超主観空間」と呼んでいる)の基、仮想の3次元空間上で、動植物を3次元の立体物として動かし、その空間をチームラボが考える日本の伝統的な空間認識の論理構造によって、日本美術的な平面にしている。
無数の升目ごとに、升目の中に描かれた何重もの模様によって、升目の中の色を分割して彩色している。例えば、ある升目の模様が赤と青で彩色されていたら、その部分は仮想空間上では紫だった部分である。
画面の升目が固定されたまま空間は動いていくので、升目内の彩色が早い時間軸でうごめいていく。遠くで見た時の空間の動植物の動きのゆっくりとした時間軸、近くで凝視した時の升目の彩色の変化の早い時間軸という2つの時間軸が共存する升目画のアニメーションという新しい視覚効果をつくっている。
それに加えて、部分によっては、升目をピクセルとして見立て、升目内のもっとも多い色で塗りつぶして描いている。ピクセルアート的であるけれど、空間上の動植物が動くたびに、画面内で固定化された升目でピクセル化されていくという、ピクセルアートとはまた違う新たな視覚表現のアニメーションをつくっている。
また、空間上で動いている立体の動植物を、空間上の3次元の固定化された升目(立体のキューブ)で抽象化する、新たな視覚表現の立体升目画アニメーションもつくり、それらとも、入り混じる。

今回は、ドーム型バージョンです。


コンセプト

升目画は、どこか、コンピュータの機能的制約でできあがったピクセルアートに通ずるところがある。若冲の升目画は、西陣織(京都西陣で織られる伝統的高級絹織物)の制作工程の工業的制約か、もしくは、それに触発されて描かれたのではないかとの説がある。ピクセルアートも、機能的制約で生まれたが、機能的制約がなくなった現在でも、表現の一方法として愛されている。若冲の升目画に、直感的に感じるデジタル感とは、そんなところではないかと思っている。

若冲の升目ごとに彩色した特異な表現は、1つの升目ごとに何種類かの色彩を使って四角の中に模様を描いており、印象主義や点描主義よりも以前から、視覚混合の光学現象を知っていて表現しているかのように思える。仮想の3次元空間上に動植物を立体的に配置しており、それを、チームラボが考える日本の伝統的な空間認識の論理構造で日本美術的な平面にしている。そして、視覚混合の光学現象を利用するために、3次元空間上の色を、画面の升目ごとに、升目の中の何重にも描かれた模様によって、分割して彩色している。

遠くで全体を見た時の、視覚混合による鮮やかに輝く色彩は、遅い時間軸で動いていく世界。
近くで凝視した時の、画面上の升目が動かない中で動植物が動き、升目ごとに細かく描かれた模様によって分割された色彩は、速い時間軸で変化していく世界。
2つの時間軸が共存する升目画のアニメーションという新しい視覚効果のアニメーションを、圧倒的情報量の作品として表現した。